マイクロマシン技術研究開発プロジェクト(1991-2000年) MMPJアーカイブ
PJアウトカム > 5. 主要分野における成果波及と将来展望
まえがき(総括)
1.PJの背景・技術開発の概要  4.1 技術の実用化
2.研究開発成果の概要   4.2 特許の出願・取得
3.研究開発成果の評価  4.3 ベンチャー企業の設立
4.産業波及効果    > > >  4.4 マイクロマシン展の活況
5.主要分野の成果波及と将来展望  4.5 国際標準化の進展

  主要分野における成果波及と将来展望

 主要な用途分野における成果波及と将来展望を整理する。
 (1)自動車分野
 プロジェクトで開発した深堀加工技術等の要素技術を活用して生まれた製品として、大きな経済的効果のあるアウトカムが先行した製品は、加速度センサ、圧力センサ等で自動車分野に適用されている。加速度センサはエアバッグ用に採用され効果を発揮している。

 このセンサの開発により従来高級車に限定されていたエアバッグが普通車にも採用できる体制が確立した。自動車には安全化を目指して機能が急速に高度化しており、圧力センは今後もABS姿勢制御装置やタイヤ圧力検知用として一般クラスの車にも多数使用されるであろう。自動車分野は携帯電話とならび膨大な市場があり、現在までの経済効果は最大であり、今後も大きな市場が期待できる。
 (2)情報通信分野
 情報通信技術の進歩は直近の10 年間で最も大きな変革をもたらした分野であろう。データ処理中心の高速・大容量の情報通信の時代から、携帯電話に代表される実世界と仮想空間の双方向の情報交換技術に進展した。携帯電話は現在第4世代への移行を目指して各社の激しい技術競争下にあるが、その中でも今後重要な役割を期待されているRF-MEMSがMEMSプロジェクトの中で開発された。これを担当した企業は2007 年にはサンプル出荷段階にあり、2010 年頃には大きな市場を形成すると推定される。

 また情報通信のインフラとしての光通信網においては光通信の高速化が重要な役割を持つ。MEMSプロジェクトでは光可動ミラーの開発が行われその実用化に成功しており、担当企業ではこの製品も2008 年頃には製品化される見通しである。この両技術の実用化は国の重点施策分野の一つであるMEMS分野の拡大に大きく貢献するであろう。

 またマイクロマシン技術プロジェクトで開発されたフォトニック結晶ファイバは、現在天文台のガイドスターを作るための技術として使われているが、この技術は将来光通信が普及するための基礎インフラ用製品として今後大きく活用される可能性がある。

 ヒアリング等を纏めた結果による経済効果では、今後、この分野の伸びも大きく、自動車分野とともに将来とも経済効果は大きいと期待される。
 (3)精密機器・計測分野
 MEMSプロセスではコストと長時間を必要とするが、マイクロマシン技術プロジェクトで開発された5軸工作機械は機械加工によって、大面積の微細加工や3次元形状の製品を提供することができるようになった。このことから業界からの引き合いは多く、プロジェクト後もさらに改良を重ね、精密機械の加工インフラのレベル向上に多大の貢献をしている。

 計測分野の製品として高速共焦点顕微鏡がある。この製品に係わる産業分野は必ずしも大きくはないが、技術的アウトカムとしてその性能の高さからプロジェクト終了直後から大きなインパクトをもたらした製品である。この製品は用途面からみると生細胞の生態観察が可能であることから進展が予想されるバイオ分野の基礎インフラとして今後も大きく貢献する。

 また、マイクロ流体操作技術として細胞分離装置が2010 年までには実用化の予定であり、この製品もバイオ分野の基礎インフラとして貢献するであろう。
 (4)医療福祉・安心安全分野
 わが国の今後の国民の高齢化、生活の質の向上を求める社会に対応するために、この分野の技術開発が重要である。しかし、失敗が許されない医療分野では実用化のリードタイムが長いことが宿命である。この分野では、マイクロマシン技術プロジェクトで開発した加工技術を活用して開発した超音波診断素子を、既に製品化していた診断装置に組込み、新機能をもつ超音波診断装置を完成している。これは医療分野に参入している企業とプロジェクトで開発を担当した企業との異業種企業の協力により達成できた製品で国家プロジェクトの成功モデルの一つとされている。

 また、現在臨床段階に入り、実用化が近い製品として脳腫瘍治療用レーザカテールがある。開発担当企業はこの製品の実用化のために医科大学と共同研究を行っている。実用化ハードルが高いこの医療分野では産業分野とはやや異なるシステムを取り入れながら進歩するであろう。

 さらに安心安全分野の製品として非冷却赤外センサがある。このセンサを内蔵した赤外カメラは照明がなくても撮影が可能であり、昼夜を問わず撮影機能が必要となる監視用カメラに利用されている。今後このセキュリティ関連のニーズも高まるであろう。
 (5)エネルギー環境分野
 マイクロマシン技術は本来小型化を目的としているので、省エネルギー化、省スペース化、少廃棄物化が可能であり環境にやさしい技術である。しかし、直接的に省エネルギーに対応した技術として実用化されている製品がいくつかある。

 まず、家庭用燃料電池フローセンサがある。このセンサは家庭用燃料電池の普及により水素等の代替エネルギー対策に寄与し、また工場のボイラ用燃焼制御フローセンサとしても使えるので、高効率燃焼による省エネルギー、環境負荷低減技術としても寄与し、排出CO2 削減に貢献するであろう。

 さらに、マイクロファクトリ技術により製作した円筒研削装置は従来の工作機械と同等またはそれ以上の精度を実現しながら、従来の研削装置と比較して、重量は1/80、面積は1/30、消費電力は1/5 とコンパクトで、小動力で加工可能であり、小容積ですみ、この機械の動力が小さいことの他に、空調設備の簡略化が可能であることから省エネルギー効果が大きく、多品種少量生産やフレキシブルな生産体制への対応等で貢献するであろう。

 そのほか、大きな市場が予想される技術に人工筋肉アクチュエータによる発電装置がある。この技術を開発した企業は現在、波力発電を行うベンチャー企業を設立しており、この技術を採用した発電設備の設置数を増加させることにより5年後には堅実な事業になると期待されている。
 (6)マイクロファクトリ分野
 マイクロファクトリ技術により作成した円筒研削装置は、現在は社内用として技術蓄積を行っている段階であるが、プロジェクトに参加していなかった小さいものを製造する企業グループも含めてこの技術が注目され、デスクトップファクトリとして新しいマイクロファクトリ分野を形成しつつある。これは欧州でも注目されており、今後、この目的にあった製品製造技術または分野として大きく発展するであろう。 

  
(マイクロマシン技術に係るアウトカム調査報告書(2007年3月、NEDO調査)より)

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