マイクロマシン技術研究開発プロジェクト(1991-2000年) MMPJアーカイブ
PJアウトカム > 4.1 産業波及効果:技術の実用化
まえがき(総括)
1.PJの背景・技術開発の概要  4.1 技術の実用化
2.研究開発成果の概要   4.2 特許の出願・取得
3.研究開発成果の評価  4.3 ベンチャー企業の設立
4.産業波及効果    > > >  4.4 マイクロマシン展の活況
5.主要分野の成果波及と将来展望  4.5 国際標準化の進展

  産業波及効果:技術の実用化

(1)プロジェクトの実用化技術  (2)プロジェクトの近未来実用化技術
1) 加速度センサ 1)CCDマイクロカメラ
2)非冷却赤外センサ 2)赤外線温度センサ
3)超音波診断用圧電素子 3)細胞分離装置
4)ICコンタクトプローブ(半導体検査針) 4)形状記憶合金点字ユニット
5)共焦点顕微鏡 5)3次元で動く指ロボット
6)燃料電池用フローセンサ 6)シリコン貫通孔配線加工技術
7) ミニ生産システム 7)脳腫瘍治療用レーザカテーテル
8)超精密5軸加工機 共焦点顕微鏡
9)高性能エンコーダ
10)形状記憶合金カテーテル
11)フォトニック結晶ファイバ
12)電池材料
13)薄膜温度センサ
14)高速共焦点レーザ顕微鏡
15)人工筋肉アクチュエータ
16)アイビジョン
 
(1)マイクロマシン技術プロジェクトの実用化技術

 本プロジェクトでは、システム化技術、機能デバイス高度化技術、共通基盤技術の3大技術分野が設定され、それらが6個のサブテーマに分けられ、更に、合計34 の小研究項目に分割されて、研究が進められた。
 その結果、プロジェクト終了6年後の2006年度末(平成18年度末)において18の製品および技術が実用化され、更に5年後の2011年度末(平成23年度末)までには11の製品および技術が実用化される見込みである。
     → (表)プロジェクトの開発技術と実用化例 (PDFファイル)

 1)加速度センサ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトにおいて高密度実装技術の開発を担当し、この成果として、高レベルなMEMS技術、機械加工技術、シミュレーション技術、実装技術が蓄積された。センサ製品の実用化には要素技術としてSi加工技術、深堀加工技術、性能評価技術等の総合技術が要求されるが、特に深堀加工技術が実用化に寄与した。深堀加工技術は当時アスペクト比が10程度であったが、このプロジェクトで20~80程度を可能とする技術に挑戦し、実用化の見通しを得た。

②具体的製品
 この開発技術を応用して、高性能の加速度センサ、圧力センサ、を実用化した。加速度センサは自動車に使用される。

③製品の特徴、既存市場での優位性
 加速度センサは1989 年頃から実用化されていたが、大きさが8mm×3mm と大きかった。この開発技術により1mm×1mm 程度に超小型にすることができる。用途は自動車のエアバッグ、ABS装置(Antilock-Break-System:自動姿勢制御装置)等に採用されている。特に、エアバッグは従来高級車のみであったが、最近では普通車にも搭載可能となり、またエアバッグ以外の用途も発生し、加速度センサの使用数量も自動車1台に10 個以上使用される車もあり、自動車用のセンサは他種のセンサを含めると膨大な数になり大きな需要になっている。この製品は技術的に世界でトップレベルであり、製品のシェアも大きい。

 2)非冷却赤外センサ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの成果として、微細加工技術、高アスペクト比加工技術、薄膜残留応力評価技術、薄膜残留応力制御技術が蓄積され、新製品開発の源泉力となった。特に、非冷却赤外センサは、赤外吸収構造をSiO2膜で形成するが、この膜の制御にプロジェクトの開発技術である薄膜残留応力制御技術を応用し実用化した。

②具体的製品
 非冷却赤外センサ、加速度センサ、エアフローセンサ等がある。

③製品の特徴、既存市場での優位性
 赤外センサは物体が放射する熱エネルギーである赤外線を二次元に配置された画素アレイで検知して映像化している。このセンサを内蔵した赤外カメラでは照明がなくても撮影が可能であり、昼夜を問わず監視が必要な監視装置等に利用されている。従来の量子型センサでは冷凍機による素子の冷却が必要であったが、冷凍機不用の非冷却赤外センサを開発した。この非冷却赤外センサによりカメラの小型化・低コスト化が可能となり、多種多様な赤外イメージングとその応用が可能となった。

 また、特徴として、検出部にSOI(Silicon On Insulator)ダイオードを使用しているため、シリコンラインで作製可能であり、低コストで高い生産性が可能となった。
 非冷却赤外センサは赤外線を画素の温度変化として検出するため、画素を基板から熱的に分離させた断熱構造とすることが必要である。今回、SOIダイオードセンサの均一な断熱構造を実現するための表面/バルク複合型の新規なマイクロマシンニング技術を開発した。これにより、画素ピッチ40μm、画素数320×240 のセンサアレイにおいて、温度分解能0.12K を実現した。

SOIダイオード式非冷却赤外センサ
<SOIダイオード式非冷却赤外センサ>

 3)超音波診断用圧電素子
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの成果である、放射光を用いたLIGAプロセス(X線リソグラフィと電鋳を組合わせた微細部品製作プロセス)の高度化された技術を使用し、微細・高アスペクト比圧電セラミックス柱を樹脂に埋め込むことによって作製した。その結果、従来品より短パルス化、広帯域等の特徴を持つ複合圧電素子を開発した。超音波複合圧電素子の特徴を以下に示す。
     ・広帯域化:比帯域が2倍以上向上(例えば3~20MHz)
     ・短パルス化:深さ分解能30%以上向上
     ・高変換効率:30%

②具体的製品
 超音波複合圧電素子を医療用の診断装置に組み込んだ超音波診断装置が開発され、上市されている。また、工業用の非破壊検査診断装置にも当素子が適用されている。

③製品の特徴、既存市場での優位性
 更に高周波域の小型発振器を開発し、胃の内視鏡に組込み胃に隣接している肝臓や膵臓の診断も行える新機能を付加した超音波診断装置を他社と協力して製品化している。本製品の実用化は、この素子を開発した企業と、医療機器を手がけている当該プロジェクトの参加企業とが協力して新機能を付加した超音波診断装置が完成した。


<開発された超音波診断用圧電素子とそれを組み込んだ診断装置>

 4)ICコンタクトプローブ(半導体検査針)
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトで開発した前記LIGAプロセスを用いて、超音波診断用圧電素子の他に、ICコンタクトプローブ(半導体検査針)も実用化した。モバイル機器の高性能化、小型化の進展は目覚しく、半導体を検査するコンタクトプローブにおいても狭ピッチ化、短尺化と品質ばらつきの低減が求められている。現在、コンタクトプローブは機械加工での製作が主流であるがこの方法では限界があり、当該プロジェクトの開発成果である先進LIGAプロセスの活用によりICコンタクトプローブの高性能化が可能になった。

②具体的製品
 半導体検査機

③製品の特徴、既存市場での優位性
 この装置は半導体の電気回路に電流が正常に流れるかどうかを検査する装置で、針の太さを従来の1/6 にするとともに硬度を高めた。半導体基板に付く傷が1/4 程度に小さくなり回路の高密度化に対応できる。放電加工の際に先端部に炭素の膜ができるため、硬度が後述のNi-Mn合金より1 割程度向上し、耐久性もある。5000 回繰返し使用後も先端部は折れなかった。LIGAプロセスはX線を光源としたリソグラフィを利用しており、回折がほとんどなくマスクパターンをサブミクロン精度で転写が可能で、かつ極めて側面垂直性が高いことが特徴である。

 プローブの先端は鋭利にすることが不可欠であるが、LIGAプロセスだけでは先端部は鋭利にできないので、マイクロ放電加工( μ - E D M : Micro Electro DischargeMachining)を組合わせた新製造法を開発し、応用した。製作する構造体の精度は面内<±1μm、厚さ<2μm(3s)を実現している。


<ICコンタクトプローブと計測装置への組込例>

 5)共焦点顕微鏡
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果であるMEMSミラーを共焦点レーザ顕微鏡のミラーに適用して、高性能化、高信頼性化を実現した。


<共焦点顕微鏡>
②具体的製品
 共焦点顕微鏡

③製品の特徴、既存市場での優位性
 従来、機械的要素としてガルバノミラーを4kHz で動かしていたが、MEMSミラーを使うことによって機械的回転部分が無くなって制御性が良くなり信頼性が数倍向上した。さらに通常モータ駆動では音を発生するが、MEMSミラーでは静かで使用環境が良くなる。これらの開発効果により、このタイプの共焦点レーザ顕微鏡ではトップシエアを確保している。部品の果たす機能は同じでも、作動原理は革新的に変化しており、本プロジェクトから進展したMEMS技術により当顕微鏡の要素技術が大きく躍進したと考えられる。

 世界最高レベルの分解能や高い繰り返し性や、厳格なトレーサビリティ体系の採用など、高い信頼性を実現した。装置の事前準備や試料の前処理は不要で、リアルタイムに高解像観察、高精度計測、さらに明視野をはじめ、暗視野やレーザ微分干渉などの多彩な観察方法で、よりリアルな試料の解析が簡単に行える。

 6)燃料電池用フローセンサ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの成果である高度な薄膜評価技術を活用して、小型の熱式半導体フローセンサを開発した。熱式フローセンサに必要な発熱体と測温体の機能要素をそれぞれポリシリコン薄膜ヒータとポリシリコン-Al薄膜サーモパイルで形成し、SiO2、SiN等の誘電体薄膜で挟んだものをシリコン基板上に設置している。このセンサは0.01m/s の微小流速を検出できる。

②具体的製品
 燃料電池用フローセンサ。MEMSフローセンサチップ付近の空気は、流れのない状態では、ヒータを中心とした温度分布が左右対称となり、流れを受けた状態では、ヒーターの風上側の温度が低く、風下側が高くなり、温度平衡状態が崩れる。この温度差をサーモパイルの起電力差としてセンシングすることで質量流量に応じた流速を計測することができる。


<MEMSフローセンサの計測原理>

③製品の特徴、既存市場での優位性
 流量、流速を測定する方法としては各種あるが、化学反応を監視する用途では体積流量ではなく質量流量が重要となる。質量流量を直接検出する方法としては白金を用いた熱線式が一般的である。

 熱線式フローセンサはMEMS技術を応用して半導体化すると非常に小型になり熱容量が小さく高感度で、消費電力が少なく、半導体プロセスで製造するため量産性に優れている。
 熱式半導体のフローセンサの構成はシリコン基板に発熱体と、発熱体の上流下流にそれぞれ測温体を設置しており、従来の熱線式フローセンサの構成部品をワンチップ1.5mm 角内に小型化集積したものである。

 これを燃料電池フローセンサとして製品化し、家庭用燃料電池フローセンサとしての販売を予定している。

 その他、燃焼制御用フローセンサ、医療麻酔用ガスフローセンサやフロー目詰りセンサとしても応用が期待できる。同様な手法で開発されたものに赤外線フローセンサがあり、非接触での温度測定を目的に、近く商品化の予定である。評価技術は研究開発を進める上で、方向を見極める最重要なキーテクノロジーであり、優れた評価技術が開発、実用化を促進し、研究開発期間の短縮に役立っている。

 7) ミニ生産システム
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果であるシステム設計技術、組立技術を活用して、ミニ生産システムの研究開発を継続していた。この技術をNEDOの関連プロジェクトである千葉コンソーシアムプロジェクトで更に前進させ、ミニ円筒研削ユニットを実用化した。


<ミニ生産システム>
(ミニ円筒研削システム)
②具体的製品
 ミニ生産システム(ミニ円筒研削システム)

③製品の特徴、既存市場での優位性
 ミニ円筒研削システムの機器構成は搬送装置、直径・円筒度測定機器、超音波洗浄機器、ミニ研削セルに分かれており、このミニ生産システムは1000mmW×600mmL×1300mmH であり、主要部であるミニ研削セルの機械本体は200mmW×200mmL×190mmH でA4サイズに収まる大きさである。このミニ研削セルは従来の生産性や加工品質を維持しながら、従来の研削セルに比べて、重量:1/80、消費電力:1/5、床面積:1/30 を達成した。しかも真円度、円筒度:1μm 以下と従来の工作機械と同等またはそれ以上の精度を実現し、2003 年より稼動している。この製品は当面自社内使用として活用する予定である。

 8)超精密5軸加工機
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 本プロジェクトの開発成果である超精密加工技術の適用により超精密5軸加工機を実用化した。その後、更に自社内で研究開発続け、現在では第3世代の加工機に育っている。この技術により得られる面粗度等の精度および品質は機械加工方式としては世界最高水準である。

②具体的製品
 本技術を活かして超精密5軸加工機を実用化した。

③製品の特徴、既存市場での優位性
 超精密5軸加工機は既に精密加工業界において使用されており、精密複雑形状金型の製造が可能となり、デジカメ部品、携帯電話用部品、DRAM製造部品、DVD部品等の大量生産に貢献している。この機械は生産財であることからその波及効果は広範囲にわたりナノ技術への影響度は大きい。デバイス製造には、半導体製造プロセスを発展させる方法と、機械加工の極限を追求する方法があるが、本技術は後者の機械加工技術をナノの領域まで進展させようとする一環であり、日本の強い分野である。 

<超精密5軸加工機>


 世界をリードしている本超精密5軸加工機に対する海外からの引き合いも多いが、戦略機械であるので貿易相手国は限られる。本超精密5軸加工機は面精度が要求されるマイクロ構造体、特に回折格子のような超精密溝加工を得意とする。回折格子はエッチング等による半導体製造技術やルーリングエンジンといった専用機械により製作されているが、これらよりも高い加工自由度を持ち、高精度な回折格子を簡便に加工できる。また、本加工機では単結晶ダイアモンド工具によるミリング加工で1μm~数百μm 程度のV型溝を1mm 程度の面粗さで、かつバリの発生がなく加工することができる。


 9)高性能エンコーダ

<高性能エンコーダを組み込んだサーボモータ>
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトで開発した超精密マイクロ加工技術を活用してプラスチック製の高性能エンコーダを実用化した。超精密5軸加工機を用いて超精密に加工された金型を作製する。その超精密金型を高精度電動射出成形機に用いてプラスチックの射出成形を行うことで、高精度な高性能エンコーダを量産することができる。

②具体的製品
 高性能エンコーダ

③製品の特徴、既存市場での優位性
 超精密加工機とプラスチック射出成型技術で製作した軽量プラスチック製エンコーダを搭載することにより、高性能で競争力に優れる小型サーボモータを上市した。

 10)形状記憶合金カテーテル
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトにおいて、複合加工技術を活用して、形状記憶合金コイルを開発した。この形状記憶合金コイルを用いたカテーテルの駆動技術は内視鏡へ応用されて製品化した。その後、この技術はカテーテル専門企業に譲渡し、そこで改良を加え、年間20 本程度の売上げがある。

②具体的製品
 医療用カテーテル

③製品の特徴、既存市場での優位性
 細孔径で高角度に曲がるので、狭いところの内視鏡として使用できる。

 11)フォトニック結晶ファイバ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
当該プロジェクトの開発成果である線引技術を活用して、対象を金属からセラミックスに変えてフォトニック結晶ファイバを製品化した。この技術は模式的にはレンコン状のファイバであり、多くのパイプを束ねて引くような線引技術が鍵となる。

②具体的製品
 天体観測用人工星(ガイドスター)装置に使用する特殊ファイバ

③製品の特徴、既存市場での優位性
 天体観測においては大気の揺らぎによって星の画像がゆがむ。この揺らぎを補償するために補償光学装置を用いるが、それには観測したい星の近くに人工的にガイドスターを作って揺らぎ波面を補償する。このガイドスターは589nm 波長のレーザ光を90km 上空のナトリウム層に当てると、Naが発光する現象を用いる。ここでレーザ光を上空に照射するための装置として、フォトニック結晶ファイバが用いられる。また、その必要部分に多層膜コーティングを成膜して反射膜を作製することが必要であり、本プロジェクトの研究成果である多層膜技術も活用できた。このフォトニック結晶ファイバは国立天文台(ハワイ、すばる望遠鏡)、ヨーロッパ南天文台(チリ、Paranal Observatory)に納入している。

 フォトニック結晶ファイバは現時点での世界での競争相手は海外2社のみである(現在、世界で製造できるのは、国内の当該社を加え3社である)。

 フォトニック結晶ファイバは、10 年位以前より世界的に注目され、多数の科学者、技術者が研究に取り組んでいる。フォトニック結晶ファイバでは光が透過する際の減衰が少ないこと、透過する際の波形変形が少ないので、単波長を送る場合など当初の波長を維持し、高出力で伝送することが可能になる。将来は、通信技術の高度化に伴い多量に使われる可能性は大きい。


<ガイドスターイメージ>

 12)電池材料
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果である材料の材料評価技術を応用してリチウム電池の正極材料、電解質材料、負極材料を開発、製品化している。従来、単体性能は評価していたが、電池を組んだ使用条件での評価ができるようになった。

②具体的製品
 リチウム電池材料

③製品の特徴、既存市場での優位性
 品質の安定した製品として販売している。

 13)薄膜温度センサ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果である薄膜製造技術を活用してガスタービンの静翼の温度を測定する薄膜温度センサを実用化した。薄膜条件を選び、凹凸のあるタービン静翼上に信頼性の高い絶縁膜を施工し、積層化技術を応用して、薄膜温度センサを実用化した。

②具体的製品
 タービン翼温度測定用薄膜温度センサ

③製品の特徴、既存市場での優位性
 高効率大型発電タービン静翼の開発を目的として、タービン静翼の温度センサとして施工した。ガスタービン静翼は1000℃以上になり、従来この部分の温度測定は不可能であり、他の技術の組合せで推定していたが、この技術により高精度の温度測定が可能となった。測温精度が向上し、そのデータを基にタービン設計に反映させ、高効率タービンの開発に寄与している。本技術は自社内での利用である。


<タービン翼温度測定用薄膜温度センサ>

 14)高速共焦点レーザ顕微鏡
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果である形状計測技術を発展、活用して、従来に比べ100倍コマ測定が可能な高速共焦点レーザ顕微鏡を実用化した。
 従来品は360コマのモータを使用して30 コマ/秒程度であったが、モータの回転数を約3倍に上げて1000 コマ/秒を達成した。プロジェクト期間中は振動問題が残ったが、プロジェクト終了後に振動問題も解決し実用化した。

②具体的製品
 高速共焦点レーザ顕微鏡

③製品の特徴、既存市場での優位性
 この装置ができたことにより生きた細胞の動的研究が可能となり、バイオ分野でも革新的な貢献をした。例えばゲノムの研究において、細胞内の特定蛋白質の動きを観察するのに利用できる。また、特定の遺伝子の同定による特許出願、薬の調合にも役立つことになる。生細胞の研究方法は、GFP(グリーン・フルオレセンス・プロテイン)を用い、特定の蛋白質を光らせる方法が最も有望であり、この測定には本装置が最適である。

 本装置を使用した測定が関係した論文は数百に及び、本装置による観察画像がNature誌の表紙を2回(29 August 2002、28 August 2003)飾っている。また、英文の海外引用文献に11 回引用されており、世界の研究者に利用されており、学術的効果も大きい。共焦点レーザ顕微鏡の世界シェアは主要5社が占めており、当企業はトップではないが、高速共焦点レーザ顕微鏡としては、現在略100%のシェアを確保している。


<高速共焦点レーザ顕微鏡>

 15)人工筋肉アクチュエータ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 実用化のプロセスは本プロジェクト終了後、約33 億円のアメリカの資金支援を受けて研究開発を継続し、その成果を更に発展させ実用化するため、2004 年2月にアメリカでベンチャー企業を設立し、応用研究を行いながら新規事業開拓を行っている。

 人工筋肉アクチュエータはゴム状のポリマーの上下に伸縮可能な電極を作成し、通電すると電極間の上面と下面が引合いクーロン力で中のゴムを変形させる原理を利用したものである。予想される用途は多方面にわたり医療・福祉、省エネルギー、環境・救助方面に実用化が期待されている。

 昨年、人工筋肉アクチュエータを用いて「波力等のエネルギーから発電」を行うベンチャー企業を日本に設立した。また、セミナー等を実施し、多方面に技術を照会し、適用分野開拓を行っている。

②具体的製品
 実験キット、発電キット、発電用機器具体的製品は人工筋肉アクチュエータの各種用途を照会した実験キットで、これを販売していたが直近(平成19 年1月)の情報では当初の実験キットの5万セットは完売し、現在は次の発電キットおよび発電用機器を製作し販売を計画している。

③製品の特徴、既存市場での優位性
 本プロジェクトの成果である人工筋肉アクチュエータは、大変形能力(380%)、高効率高速応答、軽量、構造がシンプルである等、優れた特性を示す。用途対象は非常に多く、高品質の製品のため従来市場での競争力強化となっている。


<人工筋肉アクチュエータを用いた発電用エネルギーキット>

 16)アイビジョン
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果であるシステム設計技術、省配線技術、組立技術を活用してアンプ一体型モータを製品化した。それを応用して、立体カメラ・アイビジョンを製品化した。

②具体的製品
 アイビジョン(EYVISION)

③製品の特徴、既存市場での優位性
 アイビジョンは米国放送企業とカネーギー・メロン大学ロボット工学研究所長が中心となって開発したリアルタイムロボットの制御技術の成果である。全てのカメラが同じ対象物を同じ大きさで撮影するキャリブレーション技術と放送企業が開発した映像表示技術を融合したもので、アメリカンフットボールのスーパーボールで初めて導入され全米で話題を集めた技術である。本開発製品であるサーボアンプ内蔵型の高性能ロボット数十台にカメラをそれぞれ搭載し、競技場全周に設置する。一つのシーンを全カメラで撮影し、デジタル技術で画像を連続的につなぎ合わせることで、切れ目のない360 度画像を実現する。

 野球場で行ったプロ野球中継では、バックネット裏と一塁側からバックスクリーンにかけて計30 台のカメラを設置したことがある。現在、本製品はコスト面等の課題から新たな販売は無い。

 
(2)マイクロマシン技術プロジェクトの近未来実用化技術

 ここでは約5年後の2011 年頃までに実用化できる製品を近未来実用化技術と位置付けて整理する。この製品は実用化の実績がないため製品の具体的アウトカムの特性である製品の特徴、既存市場での優位性については不明のものが多い。情報が得られた製品についてのみ整理する。
 1)CCDマイクロカメラ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果である静電アクチュエータの応用によるマイクロカメラのズームシステム及び3次元実装技術を携帯電話用カメラに活用し製品化する予定である。

②具体的製品
 CCDマイクロカメラ

 2)赤外線温度センサ
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果である薄膜製造技術の活用としてPVDF(ポリ弗化ビニリデン)薄膜を用いたモノシリック焦電型赤外線温度センサの開発を進めた。これを用いたスキャニング小型化技術により血管内カテーテル等への応用の可能性がある。

②具体的製品
 赤外線温度センサ

 3)細胞分離装置
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの開発成果である流体計測技術や微量液操作で液が通る所の表面性状や圧力のかけ方等のノウハウにより細胞分離装置(マイクロソータ)を開発し、実用化段階までに至った。既に有していた蛍光物質を入れた細胞に光レーザをあてて識別する技術、電界場でイオン化、分離する技術を組合わせることにより成功した。本プロジェクトの成果を活かせるだけのポテンシャル、周辺技術があって進展した。

②具体的製品
 細胞分離装置、環境計測機器

③製品の特徴、既存市場での優位性
 このバイオ分野の細胞分離装置は、日本国内でも米国2社がほぼ独占しており、今後、日本が開発した装置を上市の予定である。また、微量分析技術を応用して環境計測機器への適用も考えられる。

 4)形状記憶合金点字ユニット
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトで製品化した形状記憶合金コイルを駆動源として利用する点字デバイスの開発が期待される。ベンチャー企業にコイル製造技術を譲渡し、そこで開発が検討されている。

②具体的製品
 形状記憶合金点字ユニット

 5)3次元で動く指ロボット
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトの成果である磁気式エンコーダの研究を継続し、3次元で動く指ロボットを開発した。コップを持てるような微小圧力を制御できるまでに技術を発展させ、愛知万博ではロボットの指に使用して、トランペットを吹くロボットとして好評を博した。

②具体的製品
 3次元で動く指ロボット

③製品の特徴、既存市場での優位性
 当社は工業用ロボットの大手企業であり、当面自社製品の競争力強化に活用予定である。

④主な用途
 ACサーボモータ、DCサーボモータ、ステッピングモータなどの回転角度を検出する
エンコーダに適用できる。

 6)シリコン貫通孔配線加工技術
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトで赤外線センサの作製技術の中から貫通孔配線加工技術のシーズを研究し、プロジェクト期間中にこの技術を発展させた。この技術は光励起というウエットエッチングにより高アスペクト比の貫通孔加工と貫通配線を形成する技術であり、世界トップレベルとしている。当該プロジェクトのマイクロジョイント加工成形技術(貫通孔加工技術)で開発した技術ではシリコンにアスペクト比110 の貫通孔をあけることができた。この技術は半導体まわりの高密度実装への応用に使うことが可能であり、これだけのアスペクト比の貫通孔を開ける技術は世界的にも例がなくわが国の半導体実装技術に対して強力な支援技術として役立つ。現在ウエハレベルパッケージや半導体実装分野など対象製品を模索中である。この技術を用いたファンドリーサービスを開始している。

②具体的製品
シリコン貫通孔配線加工技術

③製品の特徴、既存市場での優位性
 ファンドリーサービス

 7)脳腫瘍治療用レーザカテーテル
①プロジェクト開発技術の蓄積と応用
 当該プロジェクトではマイクロレーザカテーテルの開発を行ったが、その微細薄膜加工技術の波及としてマイクロレーザ(波長2.8μm)を治療用レーザとして進展させた。その後、東京女子医大との共同研究により当製品を開発した。現在、動物臨床実験の段階である。

②具体的製品
 脳腫瘍治療用レーザカテーテル

③製品の特徴、既存市場での優位性
 脳腫瘍治療用レーザカテーテルにより、脳腫瘍の悪性細胞の薄皮を剥ぐように薄く(0.1mm 程度)除去することが可能である。レーザとロボットを組合せ正確に剥離する技術を開発しており、既に臨床に進める段階である。しかし、医療機器は製品化されても臨床実績、治療効果の確認、認可の過程を経なければならない上に、更に製造コストの問題等のハードルが多くあり、新規市場実現までにはしばらく時間を要する。脳腫瘍の発生率は10,000 人に1人程度で、その約1/3 が悪性といわれ、5年生存率は悪性細胞の95%摘出で20%程度、全てを摘出できれば約40%に倍増するといわれている。
  
(マイクロマシン技術に係るアウトカム調査報告書(2007年3月、NEDO調査)より)

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